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2016.01.15 (Fri)

第142回 SMAP解散

無題

 SMAP解散騒動は、1月13日(水)の「日刊スポーツ」「スポーツニッポン」のスクープでおおやけになった。
 ここに至る経緯を整理すると、以下のような流れである。 

 きっかけは、昨年の、「週刊文春」2015年1月29日号のインタビュー記事「ジャニーズ女帝 メリー喜多川 怒りの独白5時間」だった。
 ジャニーズ事務所内には、SMAPの「育ての親」飯島三智氏と、嵐やTOKIOを擁する藤島ジュリー景子副社長の2大派閥があり、次期社長を争っているのだという。
 ジュリー副社長は、ジャニーズ事務所を実質的に取り仕切るメリー喜多川副社長の実娘である。

 この記事は、衝撃だった。
 ジャニーズ批判の急先鋒である「週刊文春」のインタビューに、メリー副社長が応じたことだけでも驚きなのに、その発言内容がすごかった。
 
「私の娘が(会社を)継いで何がおかしいの? “次期社長候補”って失礼な。“次期社長”ですよ」
「うちの事務所に派閥があるなら、それは私の管理不足です。(略)飯島を注意します。今日、(飯島氏を)辞めさせますよ」
「もしジュリーと飯島が問題になっているなら、私はジュリーを残します。自分の子だから。飯島は辞めさせます。それしかない」


 SMAPと嵐が共演しないのは、
「だって(共演しようにも)SMAPは踊れないじゃないですか。あなた、タレント見ていて踊りの違いってわからないんですか? それで、そういうことをお書きになったら失礼よ。(SMAPは)踊れる子たちから見れば、踊れません」

 それどころか、インタビューの場に、飯島氏を呼びつけ、「SMAPをつれていっても今日から出て行ってもらう。あなたは辞めなさい」などと叱りつけているのだ。

 この記事を読む限り「関係修復は不可能」「飯島氏はもうジャニーズ事務所にはいられないのでは」と誰もが思った。

 その後、後述「週刊新潮」などによれば、飯島氏が、NHKに対し、昨年の紅白歌合戦の司会に、SMAPを推薦した、ところがそれを知ったメリー副社長が激怒し、「SMAPを司会にするのなら(=飯島氏の言うことを聞くのなら)、ほかのジャニーズのタレントを全部下ろす」と言い出したという。
 NHKは大慌てとなり、謝罪し、(メリー副社長が育てた)近藤真彦がトリに入ったのだという。

 これらの動きを水面下で追っていたのは、「週刊文春」のライバル誌「週刊新潮」だった。
 1月14日(木)発売の号(1月21日号)で、「『SMAP』解散への全内幕」としてスクープ掲載された。

 (木)発売の週刊誌の最終校了は、(火)夕刻である。
 ということは、遅くとも12日(火)早朝には原稿を印刷所へ入れていなければならない。
 記事には、ジャニーズ事務所側の「飯島氏の退職とSMAPの独立問題を協議していますが、現在、交渉中ですから内容に関する回答は差し控えさせていただきます」とのコメントが載っている。

 取材・執筆の追い込みは、おそらく、10日(日)~11日(月・祝)あたりだったろう。
 そのころには「週刊新潮」が何を取材し、どんな記事が載るのか、漏れ伝わっていたはずだ。
 あるいは、ジャニーズ事務所が、一週刊誌にスクープされることを嫌い、リークしたかもしれない。

 かくして、「週刊新潮」発売より1日早く、13日(水)の「日刊スポーツ」「スポーツニッポン」などが先行スクープすることになったのである。
 つまり、今回の件は、世間的にはスポーツ紙のスクープだが、実際は、2つの週刊誌によって火をつけられ、先行していたのである。
 たまたま世に出たタイミングが、スポーツ紙の方が早かっただけなのだ。

 実は私は、これら一連の話は、ずいぶん前に、知人の芸能関係者から、かなり詳しく聞いていた。 
 「そのうち、飯島さんは独立すると思いますよ。どこかの週刊誌がハッキリ書いてくれれば、すぐにスポーツ紙が追随するでしょう。その際、最大の焦点は、SMAPが飯島さんについていくのか、ですね」などと。
 私のような芸能界に無縁の人間が知るくらいだから、芸能マスコミの間では、この話は以前から「常識」だったのだ。
 
 かつて、こんなことがあった。
 月刊「文藝春秋」1974年11月号に、ジャーナリスト・立花隆氏によるレポート「田中角栄研究~その金脈と人脈」が載った。
 立志伝中の大人物と見られていた田中角栄首相が、いかに卑劣な土地転がしでカネを生み出し、そのカネをばらまいて総理の座に登りつめたかが、詳細に描かれていた。
 田中首相は、十分な説明を避けたまま退陣し、その後、アメリカでロッキード事件が発覚、逮捕される。

 当時、上記・立花レポートを読んだ大新聞の政治部記者たちは、口をそろえて「こんなことは、百も承知だ」と言ったという。
 つまり知っていたが書かなかった(書けなかった)というのだ。
 それを、一介の雑誌が書いて、首相を辞任にまで追い込んでしまった。
 大新聞は、一斉に「百も承知だった」ことを、初めて知ったかのように書いて、立花レポートに追随した。
 今回も、何となく、それに似ているような気がする。

 偶然だが、スポーツ紙が「SMAP解散」を報じた13日(水)の産経新聞のコラムで、作家・曽野綾子さんが、こんなことを書いている。

「かつて朝日新聞を代表とする3大全国紙と、大手通信社のうちの1社は、文革以後の中国に関して、私たち作家の書く内容を中国に成り代わって検閲した」
「当時今よりさらにひどい恐怖政治を敷いていた中国のことを、一言でも批判的に書こうとしようものなら、これらの新聞社はその原稿を書き直すようわれわれに命じ、書き手がそれに応じなければ以後その作家には書かせなかった」

 これは、ドイツで、ヒトラーの『わが闘争』が注釈入りで再出版されることに批判的な声があり、それに関しての記述で、曽野さんは、
「悪は善と同じように、真っ向から突きつけ、見せて、学ばせなければならない。戦後の日本は、子供に理想と善だけを教え、悪とは何かを教える機会をほとんどなくしてしまった」
 と綴り、最後に、こう結んでいる。

「中国におべっかを使う波に乗らずに大新聞の卑怯さと闘ったのは、産経新聞社と時事通信社、ならびにかなり多数の雑誌社系の週刊誌であったことは忘れられない」

 いうまでもなく、SMAPが解散するかどうかは、私やBandPowerにとってはどうでもいいことである(もっとも、ミュージックエイトやウィンズスコア、ニュー・サウンズ・イン・ブラスなど、Jポップ吹奏楽の関係者には、少々気にかかる問題かもしれない)。

 だが、これだけ国民に注視される出来事を、最初に報じたのが週刊誌で、そこに他メディアが追随したことを、私たちは、少しばかり覚えておいたほうが、いいと思う。
 今は、漫然と生活していれば勝手に入ってくる、テレビとネットの情報だけで暮らしている人間があまりに多い。
 時々は、そこから脱しないと、曽野さんが述べているように、いつかまた、文革のときと同じような時代が来るような気がする。
 何を大げさなことを、と言われれば返す言葉もないが、人間は、こういうことの繰り返しで、戦争だのテロだのから逃れられなくなっているようにも思えるのだ。
 SMAP解散報道を見ていて、なんとなくだが、そんなことが気になった。


◆「富樫鉄火のグル新」は、吹奏楽ウェブマガジン「BandPower」生まれです。第132回以前のバックナンバーは、こちら。

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