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2020.05.12 (Tue)

第284回 「脱グローバル」なのか

府中の森
▲1週間にわたって東京都高等学校吹奏楽コンクールが開催される、
 「府中の森芸術劇場」(府中市HPより)


 全日本吹奏楽コンクール=通称「全国大会」(全日本吹奏楽連盟と朝日新聞社の共催)が中止となり、その予選にあたる支部大会や都道府県大会なども続々中止になっている。
 全国大会は10月末~11月の開催だが、地方によっては、初夏から予選が始まるし、練習を、ほとんどの団体は春から本格化させる。しかし、学校は休校で部活はできない(はず)。吹奏楽とは、密閉(遮音)された、ほとんどは狭い練習室に、50人前後の人間が集る「3密」が常態である。しかも、息を大きく吸ったり吐いたりして、飛沫も飛ぶ。
 よって、仮に開催時期には終息して、ワクチン接種が確実だとしても(まず考えられないが)、それ以前に練習ができないわけで、これでは無理だろう。

 ところが、東京都高等学校吹奏楽連盟は、「緊急事態宣言」真っ最中の4月14日付で、夏のコンクール(予選)実施、および参加申し込み受付と、説明会実施の通知を発表した(正確には「実施へ向けて準備を行って参ります」との表現だったが)。
 わたしはこれを見て、少々背筋が寒くなった。「規模を縮小」「演奏終了後、解散」「審査結果はHPで発表」などの配慮はあった。だが、無観客実施と思いきや、「観客の制限」を行ない、「チケットの一般販売は中止」するものの、「参加団体の割当チケットと追加チケット」は販売するとされていた。つまり参加団体と追加分(保護者の分だろう)の観客を想定していたようなのだ。大きな会場を長期間借り切る以上、経費が必要なのはわかるが、ちょっと驚く記述だった。
 
 だが、やがて読んでいるうちに、「不思議」な感覚も覚えた。
 この通知には「よく検討した上で、学校長の許可を得て、参加申込をお願いいたします」とあったが、参加する以上は「練習」が不可欠なわけで、これに関しては何も触れられていないのだ。「練習は危険だから、禁止します。当日も舞台上は、ほぼ3密状態になります。そのうえで、よく考えて参加してください」というのならわかる(ありえないが)。
 だが、その点には、まったく触れられていない。「実施」と「練習」がセットであることは大前提のはずである。これでは「参加する以上、闇練習で問題が発生しても、関知しません」と言っているようにとられても仕方ないと思った。
 誤解しないでいただきたいのだが、わたしは、この通知を批判しているわけではない。そうではなくて、長年、あれほどのイベントを円滑に運営してきた都の高吹連が、なぜ、このようにすぐに突っ込まれるような通知を発表したのか、それが「不思議」で仕方ないのだ。

 毎年書いているが、東京都高等学校吹奏楽コンクールは、実に巨大な催しである(今年度は第60回の節目だった)。わたしも、若いころは、関東近県、時には地方まで出かけて、予選や支部大会を聴いてきたが、東京の高校の部ほど巨大なコンクールは、ほかにない(東京は、中学の部も巨大運営)。なにしろ、府中の森芸術劇場内の2つのホールを借り切って、4部門、のべ280余団体が(昨年度の場合)、次々と入れ替わりながら、朝から夕方まで、1週間、休みなく演奏し、審査を受けるのである。その間、どれだけの出場者が舞台を横切り、どれだけの観客(保護者、学校関係者など)が、客席に出入りすることか。
 だが、わたしも50年近く通っているが、少なくとも、目に見える大きな運営トラブルには、出会ったことがない(最寄り駅~会場の混雑や、会場に不審者がいたとか、落雷で停電とかはあった。全国大会の中学の部で、新潟県中越地震が発生し、演奏が一時中断したこともあった。しかし、これらすべて、運営側の責任ではない)。年ごとに混雑の度は増しているが、それでも毎年、見事に運営されている。
 それほど手練れの先生たちが、なぜ、あのような発表をしたのか。全日本吹奏楽連盟の発表を、なぜ、もう少し待てなかったのか。勝手な推測だが、どうも、半ば混乱のうちにこのような発表をしてしまったような気がしてならない。

 たまたま都の高吹連の例をあげたが、実は昨今のコロナ禍で、これに似たようなことが、ほかでも発生しているように感じる。休業要請を受け入れないパチンコ屋。それに対する堂々たる反論。夜8時過ぎに営業中の店を警察に通報する市民(犯罪行為ではないのだから、警察に通報しても意味がない)。ポストに投函されたアベノマスクを盗んで歩くやつ(我が家もやられた)。みんな、どこか周囲が見えなくなっている、あるいは、気にしなくなっている。

 これらは以前だったら「無秩序」で済んだだろう。だが、コロナ禍のいまでは、小さな「脱グローバル」といえるかもしれない。
 というのも、たまたま、アメリカの歴史学者エドワード・ルトワック博士による、産経新聞5月9日付のインタビューにおける「グローバル時代は終わった」との示唆に富んだ意見を読んだからだ。
 博士は言う。EUは「新型コロナへの対応に失敗した」「共有された医療情報や共通の医療戦略は存在せず、相互支援もあまりなかった」。
 新型コロナは「真実を暴くウイルスだ。EUが機能しないことを暴き、多数の死者を出したイタリアの無秩序ぶりを暴いた」
 そして「EUやWHOなどの機能不全が明白となったことで、世界はグローバル化や多国間枠組みから後退し、国民国家が責任をもって自国民を守る方向に回帰するだろう」「今後は英国に続き多くの加盟国が(EUから)静かに脱退していくはずだ」と断定する。

 その後、都の高吹連の通知文書はHPから削除され、「実施可否については、現在連盟内で継続的に検討をしています」との文が載っている(5月12日現在)。

【追記】
 本稿アップ後、同日、東京都高等学校吹奏楽コンクールは、中止が発表された。

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