2021.07.11 (Sun)
第319回 酒にウイルスが入っているとでもいうのか。

▲3種類ある「虹アーチ型」ステッカー。
左から【A】(対策徹底)、【B】(王冠マーク)、【C】(点検済)
※本文参照
現在、東京都内の飲食店は、ほとんどが入口に「虹アーチ型」のステッカーを掲げている。
これが、いままで3段階にわたって変化していることを、ご存じだろうか。
最初が上記【A】タイプで、東京都が開設したウェブサイトにアクセスして自分の店を登録する。そして、ウェブ上でいくつかのアンケートのような質問に答え、「合格」すると、感染症対策に対する「宣誓書」と、店名入りのステッカーをダウンロードできる。
質問は「席の間隔を十分にとっているか」「換気を十分におこなっているか」といった常識的なもので、子どもでも「合格」できる。
小池都知事が、このステッカーを掲げながら「外での飲食は、このステッカーのお店を選んでいただきたい」と説明していた記者会見をご記憶の方も多いだろう。
かくして都内のあらゆるお店が「宣誓書」と「ステッカー」を入手し、十分な対策に取り組んだはずなのだが、感染拡大は、おさまらなかった。
その間、飲食店が感染拡大の温床なのか否か、その種の本格的な検証は、まったくおこなわれなかったはずだ。
すると東京都は「コロナ対策リーダー研修」なる制度を提唱し始めた。
今度は、飲食店に、最低1人、「コロナ対策リーダー」を置けと言い出した。
そして、そのリーダーは、感染対策の研修を受けろというのだ。
ただし、まさか東京中の飲食店を対象にした研修会など開催できるわけないので、ウェブサイト上で「研修動画」を公開した。
あまり聞いたことのない(若いひとは知っているのだろうが)お笑い芸人のようなコンビが登場し、店内の対策について、寸劇(ほとんど茶番劇)のような芝居を演じる。
そして、見終わったあと、またもアンケートのような質問があり、それに答える。
もちろんこれまた、子どもでもわかるような常識的な質問である。
それらに「合格」すると、再び、宣誓書のような書類と、今度は【B】のステッカーをダウンロードできるのである。
【A】とのちがいは「王冠」マークが付いていることで、下に「感染防止マナーお声かけ店 対策リーダー研修〇月修了」などと書いてある。
つまり「この店には研修を受けたリーダーがいて、お客様に対して『大声で話さないでください』『もっと席を離してください』などと声をかけますよ」というわけだ。
かくして都内の多くの店が、この【B】の「王冠ステッカー」を入手し、さらに十分な対策に取り組んだはずなのだが、感染拡大は、おさまらなかった。
その間、飲食店が感染拡大の温床なのか否か、その種の本格的な検証は、まったくおこなわれなかったはずだ。
すると今度は、「感染防止徹底点検」をはじめた。
すでに【B】までのステッカーを入手している店にメールをおくり、東京都が派遣する専門員の点検を受けろというのだ。
かくして多くの店が専門員(アルバイトと思われる)に店に来てもらい、「席の間隔は十分ありますか」「アクリル板は設置してますか」「換気は十分ですか」などをチェックしてもらった(【A】【B】段階での質問事項とほとんど同じ)。
すると「点検済証」と、【C】のステッカーがダウンロードできる。
どうやら、この【C】に至っていないと、今後、時短・休業の協力金なども申請できないようである。
かくして都内の多くの店が点検を受け、【C】のステッカーを入手し、さらに十分な対策に取り組んだはずなのだが、感染拡大は、おさまらなかった。
その間、飲食店が感染拡大の温床なのか否か、その種の本格的な検証は、まったくおこなわれなかったはずだ。
これほどまでに手間と経費をかけて、東京都は「感染拡大」対策をおこなってきたのだが、それでもおさまらず、この間、「緊急事態宣言」が4回も発出された。
後段の2回に至っては「酒類販売停止」「休業要請」、さらに4回目に至っては「卸売店から飲食店への酒類提供停止」などという、ほとんど社会主義独裁国家のような強権発動に至った。
わたしはこういうことは不勉強なのだが、これは、憲法で保証された経済活動の自由を妨げているのではないか。
いったい、いままでの【A】【B】【C】3段階の「対策」「研修」「点検」は、何の意味があったのだろうか。
これらをきちんとやれば、感染は拡大しないはずじゃなかったのか。
なのに、拡大がおさまらないのだから、理由は以下3つのどれかしかない。
①感染拡大の原因は、飲食店とは関係ない。
②飲食店のほとんどが【A】【B】【C】を守っていない。
③酒のなかにウイルスが入っているので、どうにもならない。
上記のどれかであろうことは、誰でもわかる。
いったい、いつまでこんなことが繰り返されるのだろうか。
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