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2022.01.11 (Tue)

第342回 『サンダーバード』の55年

サンダーバード
▲(左)シネマ・コンサート、(右)最新の映画版


 イギリスのTV人形劇『サンダーバード』の、日本での放送開始55周年を記念して、コンサートや映画など、いくつかのイベントがつづいている。
 先日(1月9日)には、シネマ・コンサートが開催された(西村友:編曲・指揮、東京佼成ウインドオーケストラ/東京オペラシティ・コンサートホールにて)。最近流行の、映像とオーケストラ演奏が合体したコンサートだ。

 わたしは、「シネマ・コンサート」が、あまり好きではない。
 やはり映画のサウンドは、映画館の真っ暗な密閉空間で、スピーカーの大音響に身を任せてこそ迫力あるものだ。それが、明るいコンサートホールで、はるか遠くの小さなスクリーンを見上げながら、ステージ上でのオーケストラ演奏を聴いても、まったく迫力がない。重要なのは、ナマ演奏だとか、プロの素晴らしい演奏とかではなく、座席や空気を通じてビリビリ音が伝わってくる感覚なのだ。それが、シネマ・コンサートでは皆無である(『2001年宇宙の旅』のときなど、空しくなって前半で帰ってしまった)。

 よって、今回の「サンダーバード55周年 シネマ・コンサート」も、わたし自身、音楽解説コラム(作曲者バリー・グレイにまつわる)をネット連載したが(下段参照)、正直なところ、あまり期待していなかった。
 ところが、これが、なかなかよかったのである。

 わたしは、古くからの『サンダーバード』ファンだが(1966年のNHK初回放送から観ている)、それを割り引いても、いままで体験したシネマ・コンサートで、いちばんよかった。
 その理由は、主に3つある。

①オーケストラが「管弦楽」でなく「吹奏楽」だった。
本作の音楽は基本的にマーチ系なので、管楽器と打楽器が活躍する。よって吹奏楽にピッタリだった。しかも演奏は、日本を代表するトップ・プロ吹奏楽団である。管弦楽では、あれほどの迫力は出なかったのではないか。また、西村友による編曲も見事で、ファン心理のツボを突くスコア、演奏だった(演奏するほうはたいへんだったと思うが)。
最後には、コーラス・グループ「フォレスタ」が加わって日本語版主題歌も演奏され、懐かしかった。

②映像が曲に合わせて細かく編集された、良質な「イメージ映像」だった。
曲ごとにその回の映像が流れるのだが、おおよそのストーリーがわかるように編集されていた。特に《ペネロープのテーマ》は、第9話「ペネロープの危機」の音楽だが、ほかの回の場面も次々と登場し、ほとんど彼女のファッション・ショーのような楽しさだった(実際、ペネロープは、国際救助隊の仕事がないときは、ファッション・モデルもつとめている)。この編集も、手間がかかっていた。
ダイジェストのイメージ映像だと、音楽を聴きながら、物語やキャラクター設定などを想像しながら聴くことになるのだが、意外と楽しかった。これが、特定の回をまるごと上映する(一般的なシネマ・コンサートのような)スタイルだったら、疲れてしまっただろう。
ただし、2本の劇場用映画からの映像は、権利関係のせいか、使用されず残念だった。特に《ZERO-X号のテーマ》は、あの「合体シーン」があるとないとでは、感動の度合いがまったく異なる。《サンダーバード6号のテーマ》も、あのラストの映像が使えたら……と残念でならない。

③会場が適度な大きさで、残響がたっぷりあるホールだった。
シネマ・コンサートといえば、東京国際フォーラム・ホールAでの開催が多い。5000席の巨大ホールだ。ステージははるか彼方にあり、その奥に小さくスクリーンが下がっており、その前でオーケストラがなにかやっている……そんな印象を覚えた方も多いと思う。
しかし、今回の東京オペラ・シティは約1500席、残響1.9秒(満席時)のホールである(2・3階のLR席はほとんど使用せず)。そこで、フル編成の吹奏楽団が演奏するのだから、すごい迫力だ。PAも使用していたようだが、音圧がビリビリと伝わってきた。
パイプ・オルガン前に下がったスクリーンは小ぶりだったが、あのキャパにちょうどよかったと思う。

 というわけで、興行的にはたいへんだろうが、「シネマ・コンサート」は、適度なキャパの会場で、イメージ映像中心のほうがいいように思った。たとえば、伊福部昭《SF交響ファンタジー》第1番~第3番なども、吹奏楽版で、東宝怪獣映画のダイジェスト映像を上映しながら聴いたら、どんなに楽しいだろう(もう行われているかもしれないが)。

 なお、「55周年」にあわせて、映画『サンダーバード55/GOGO』も劇場公開されている(配信やBlu-ray販売も)。これは、むかし製作されたラジオ・ドラマ版の”ペネロープ三部作”(レコード化された)の音声とストーリーをもとに製作された新作である。
 ただし、新作といっても、当時のスタイルのままでつくられたので、現代風の感覚は皆無。まるで、半世紀前につくられてオクラ入りになっていた未公開編を観ているような気になった。よくあそこまで、むかしのままにつくれたものだと感動した。
 今回の日本語版では、かつて黒柳徹子が演じたペネロープの声が、満島ひかりに替わったが、これがなかなか合っていた。どこの誰がこんなキャステイングを考えたのかしらないが、まことに慧眼だと恐れ入った。
 半世紀たっても、これだけ話題がつづく『サンダーバード』は、おそるべきコンテンツである。
〈敬称略〉

「サンダーバード シネマ・コンサート」
映画『サンダーバード55/GOGO』公式サイト
わたしの連載コラム(全4回) 「サンダーバード音楽の秘密」

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 全国大型書店、ネット書店などのほか、TKWOのウェブサイトや、バンドパワー・ショップなどでも購入できます。
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