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2022.11.08 (Tue)

第367回 東京国際映画祭の「成熟」度

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▲第35回東京国際映画祭(有楽町駅前広場のディスプレイ)


 第35回東京国際映画祭(TIFF)が終わった(10月24日~11月2日)。
 TIFFといっても、よほどの映画好きでなければ「それがどうした」で終わりだろうが、国際映画製作者連盟(FIAPF)が日本で唯一公認しているオフィシャルな映画祭である。だから、俗にいう「世界三大映画祭」(カンヌ、ベルリン、ヴェネツィア)と、一応は同格(のはず)なのである。よって、映画好きには、見逃せないイベントなのだ。
 本年は、10日間で110本が出品され、上映動員数は約6万人だったという。コンペティション部門には、107国・地域から1,695本の応募があり、15本が選出・上映された(世界初上映8本、製作国外での初上映1本、アジア初上映6本)。

 あたしは、平日昼間は仕事があるので、夜しか行けない。せいぜいコンペ部門6本を含む10本しか観られなかった(しかもグランプリ受賞作には当たらなかった)。よって、とても映画祭の全容を理解しているとはいえないのだが、それでも、毎年数本ずつではあるが、もう30年近く通っているので、簡単に、印象を記しておきたい。

 映画祭は文字通り「お祭り」である。単に上映するだけではなく、海外セールス、関係者の交流、新規作品・才能の発掘、映画産業の隆盛などの目的もある。
 あたしは素人だし、それほどの数を観ていないので、各賞の受賞作品が、それにふさわしいのか、また、海外の映画祭と比べてどの程度のレベルにあるのか、自信をもって述べることはできない。
 だが、会場が、日比谷・有楽町・銀座などでの分散会場となったせいか、どこで何をやっているのかまったくわからず、少なくとも、「お祭り」を実感することはできなかった。東京駅前の丸ビル(イベント会場)と、TOHOシネマズ日比谷と、シネスイッチ銀座の3か所を同一映画祭の会場として認識しろというのは、かなり無理がある。

 当初は渋谷ではじまったTIFFだが、その後、かなり長いこと、メイン会場を六本木(六本木ヒルズ)としてきた。ここは、いい意味で閉鎖的な会場で、いかにも「お祭り」に来たような興奮を覚えたものだ。大半の作品が、TOHOシネマズ六本木を全館貸し切りで上映されていたので、移動も楽だったし、出入口が一か所だから、知り合いにもよく会った。一度、知己の某名画座スタッフと、まったくの隣席になって驚いたことがある。会場前の「ヒルズカフェ/SPACE」が一種の交流場所になっていて、(あたしは無関係だが)海外マスコミや映画関係者らしきひとたちが楽しそうに過ごしている光景も、印象に残っている。いかにも「お祭り」のような楽しさがあった。

 だが、日比谷・有楽町・銀座での分散会場になってからは、「映画祭」ではなく、単に「珍しい海外作品を、普通の映画館に観に来た」としか感じられない。今日はTOHOシネマズシャンテ、明日は丸の内ピカデリーと、作品によって、あちこちをまわらなければならない。映画館によっては、その前後に、通常の封切り作品を上映しているところもあって、終映後、早々と退出を促される場面もあった。
 
 また、国際映画祭(特にコンペ部門)は、製作関係者が同行し、トークやQ&A、記者会見などに登壇するのが慣例である。TIFFコンペでも、ほぼ全作品でゲストが登壇した。あたしが観た作品のうち、印象に残ったゲストは――
 乳児養子売買の実態を描くスリランカ映画『孔雀の嘆き』(最優秀芸術貢献賞受賞)では、サンジーワ・プシュパクマーラ監督が登壇。その真摯な態度、また、妹さんが早世した事実をモデルにしたとのエピソードに、一瞬、会場は厳粛な空気に包まれた。
 イランのブラック・コメディ『第三次世界大戦』(審査員特別賞受賞)では、監督代理として助演女優のマーサ・ヘジャズィさんが登壇、そのあまりの美しさと知的な対応に、撮影タイムでは場内が騒然となった。
 これらも、国際映画祭ならではの光景である。

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▲(左)スリランカのプシュパクマーラ監督(左。ほかはプロデューサー)
 (右)場内を騒然とさせたイランのヘジャズィさん。


 しかし、その後のQ&Aとなると……英語の逐次通訳が入るので、それだけでも時間がかかるというのに、どうも客席からの質問内容があいまいで、「質問」ではなく、(いかにも自分が発見したと言いたげな独自の)「感想」を述べるひとがいて、そのために30分のトークタイムが、実質、短くなってしまうのが残念だった(英語圏以外の場合は、その国の通訳も入って、3か国語が飛び交うので、さらに時間がかかる)。
 しかも、かなりレベルの高い通訳がいるのだから、普通に日本語で質問すればいいのに(客席の9割以上は日本人なのだし)、わざわざ、たどたどしい英語で質問し、先方にうまく伝わらず、隔靴掻痒のやり取りになることも、しばしばだった(これは、毎年GWに開催されるイタリア映画祭ではさらに顕著。イタリア文化会館の会話教室じゃあるまいし、イタリア語でえんえんと「感想」を述べる日本人が時々いる)。

 余談だが、どこの会場でも、上映前には、コロナ対策への注意喚起と、上映後にゲスト・トークがあることなどを「英語」でアナウンスするのだが、あれ、通じていたのだろうか。おそらく学生ボランティアだと思うが、英語がダメなあたしでさえ、聴いていて「この英語アナウンスで大丈夫か」と心配になることが、しばしばだった。

 TIFFは、たしかに大きなイベントに育ち、公式プログラムには総理大臣や都知事の挨拶文も載るが、真の意味での「国際」映画祭には、まだ成熟していないような気がした。

第35回東京国際映画祭受賞作品(公式サイト)。
  ※各作品の予告編も観られます。

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