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2016.04.26 (Tue)

第164回 さようなら、真島俊夫さん

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▲DVD/ブルーレイ『三つのジャポニスム 真島俊夫 作品集』(パルス東京) 河邊一彦指揮、海上自衛隊東京音楽隊の演奏に、作品の背景となった風景を重ね合わせた労作。


 真島俊夫さんが亡くなった(行年67)。
 吹奏楽に関心のない方には、聴いたことのない名前かもしれないが、いま日本で吹奏楽に携わっていて、真島さんの編曲もしくはオリジナル曲を演奏したことのないひとは、ほとんどいないはずだ。

 訃報を聞いて、パソコン内のメールをひっくり返してみると、わたしと真島さんのやり取りが、約10年前の分から残っていた。

 あるとき、ラヴェル好きな真島さんに、ジャン・エシュノーズ/関口涼子訳『ラヴェル』(みすず書房)の存在をお教えし、読了したわたしの分を送ろうとしたら、すぐにご自分で入手され、メールが来た。

 「ラヴェル」、さっそく注文して、読みました。
ローゼンタールが書いた伝記等を読んでいたので状況がよく判り、面白かったです。
比べるのはおこがましいのですが、同じ書き屋として、ラヴェルの神経質な部分はよく理解でき、似たところをみつけると嬉しかったです。


 ちなみに、上記本の翻訳者・関口涼子さんは、先日発表になった、日本翻訳大賞受賞作、パトリック・シャモワゾー『素晴らしきソリボ』(河出書房新社)の翻訳者である(パトリック・オノレとの共訳)。
 真島さんは4月21日に亡くなったが、その3日後の24日に授賞式があり、パリ在住の関口さんが来日した。
 わたしは、関口さんの姿を見ながら、真島さんの姿や、エシュノーズ『ラヴェル』のしゃれた装釘が思い出されて、泣きそうになった。

 真島さんとは、本の話でのやりとりが多かった。
 山形県鶴岡市のご出身で、同郷の作家、藤沢周平をこよなく愛していた。
 藤沢周平の世界を紹介するヴィジュアル解説本を送ったことがあった。

昨日、藤沢周平の本が届きました。
貴重な鶴岡の写真や文章に、思わず一気に読んでしまいました。
懐かしさで胸がいっぱいになりました。
ありがとうございました。
僕は異国情緒も好きで、ヨーロッパにもよく行き、特にパリは好きです。
日本では京都と沖縄が好きですが、やはり生まれ育った地には人に説明しようのない郷愁を感じます。
ドボルザークの曲を聴くと、この人はいつも強い郷愁の思いを原動力にして作曲していたのだろうと思います。
それが人の胸を打つのだろうと思います。


 ユーモアが好きで、「落語吹奏楽を書きたい」と言っておられた。
 噺家の語りが入る吹奏楽曲である。
 「噺家は、ぼくが連れてきますから」とのことだった。
 その一方で、辛辣なことも、率直におっしゃる方だった。

海外では、よくフルスコアだけを販売していますが、あれは、そこからパート譜を作って演奏する事が絶対にないという信頼の上に成立しているようです。
欧米ではそういう意識が徹底しています。
東洋の日本では、まだまだコピー譜で演奏している人達が多いのが現状です。
これは日本と中国系だけのようです。
何しろ学校の先生が当たり前のようにコピー資料を生徒に配布しているわけで、これは、学びたい人にはタダで勉強させてあげる事が美徳とされている「儒教思想」の流れを汲んでいる日本の教育理念に根ざしているようです。
ですからほとんどの先生は「演奏して学びたい生徒が演奏するのに何で金が必要なのか」という意識です。
日本人は基本的には泥棒民族ではなく、つまようじ一本、リード一枚でもお金を出して買い、楽器には何十万というお金を出す人達ですが、なぜか文章や楽譜はコピーするのですね。
とても不思議です。

 出版界に長くいるわたしも、この問題にはずいぶん悩まされた。
 そうか、「儒教思想」があったのか…と、納得できた記憶がある。

 わたしの、USBにおさめた吹奏楽関係の原稿フォルダーを「真島俊夫」で検索すると、全原稿の半分強が引っかかった。
 それほど、真島作品の解説を書いてきたのだった。
 これからも、書きつづけるのだろうと思う。

 さようなら、真島俊夫さん。

このコンサートのプログラム解説を書きました。4月29日です。ぜひ、ご来場ください。

◆「富樫鉄火のグル新」は、吹奏楽ウェブマガジン「BandPower」生まれです。第132回以前のバックナンバーは、こちら。

毎週(土)23時FMカオン、毎週(月)23時調布FMにて、「BPラジオ/吹奏楽の世界へようこそ」案内係をやってます。4月は「さようなら、真島俊夫さん」「来日決定! ブラック・ダイク・バンドの魅力」です。詳細は、バンドパワーHPで。

◆ミステリを中心とする面白本書評なら、西野智紀さんのブログを。
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