2015.12.30 (Wed)
第138回 映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は、シリーズそのものへの「オマージュ」だった。
1977年の第1作以来、封切で観てきた私にとっては、涙なしでは観られない、まるで名画座気分の映画だった。
だが、このシリーズが、今回から「ディズニー映画」になったことを忘れてはいけない。
今回のプログラムは本文72頁(1,000円)の大部だが、このうち表3を含む「16頁」が、関連グッズの広告である(いまどき、こんな大量の広告が入るムック、めったにない)。
そのすべての頁に「Lucasfilm LTD.」のコピーライト表示が入っている。
2012年、「スター・ウォーズ」シリーズの製作母体「ルーカス・フィルム」社は、ディズニー社に買収された。
よってこの表示は、いまやディズニー社の別名なのである。
日本人は、ディズニーランドや、『アナと雪の女王』、ミッキーマウスなどを通じて、巨額のカネをディズニー社に支払ってきた。
これからは、「スター・ウォーズ」の分が加算されるのだ。
現在、アメリカでは、1977年以前の「法人著作権」保護期間は、発表後75年から95年に延長されており、さらに、1978年以降については、作品発表後95年間か制作後120年間のいずれか短い方となっている。
これらの保護期間は、ミッキー・マウスをはじめとするディズニー社のキャラクターの権利失効が迫るたびに改正延長されてきた。
その陰には、ディズニー社の徹底的な政治工作(ロビイスト活動)があったといわれている。
だからアメリカの著作権延長法は、通称「ミッキーマウス延命法」と呼ばれている。
そしていま、ディズニー社は、ミッキーマウスに匹敵するキャラクター群を手に入れたというわけだ。
2015年のTPP交渉で、日本の著作権法は、アメリカの思惑通り、現行50年から70年に延長されることになった。
アメリカは世界最大のコンテンツ輸出大国だから、日本が50年のままでいることが許せなかった。
その一方で、不平等条約といわれている著作権保護期間の戦時加算は、相変わらずそのままだ。
ということは、日本の対アメリカ保護期間は、今後、70年プラス約11年(戦時加算)で、80年強となるのだろうか?
私は「アメリカによる日本占領はまだ終わっていない」と何度となく口にしているが、先日、『~フォースの覚醒』を観て、ますますその感を強くした。
安保法制、関税撤廃、普天間問題、そして「スター・ウォーズ」……「占領」どころか、日本は、ディズニーを代理人とするアメリカに「完全征服」されたのではないか。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は、あまりに面白い。
しかも評判がいい。
そこで、悔しいけれど、一人くらい、こんなことを言う者がいてもいいだろうと思い、ぼやいてみた。
フォースと共にあらんことを。
(12月28日所見)
◆「第122回 あるとんかつ屋の廃業」も、お読みください。
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