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2016.01.02 (Sat)

第139回 2015年紅白歌合戦・雑感

 紅白歌合戦で思ったのは、若い人の楽曲に、「中途半端なコーダ(終結部)」が多いことだった(いまに始まったことではないが)。
 曲の途中でプツリと終わるような曲ばかりだ。
 まるで、コーダ部のないソナタを聴かされているようだった。

 音楽のエンディングは、自然とクレシェンド(次第に大きく)、もしくはアッチェレランド(次第に速く)して、終止形の和音ではっきりと(もしくはフェルマータで)終わるのが、一般リスナーには、もっとも自然に感じられる。
 しかしそれらのすべてを拒否して、楽曲の途中で突然終わる。
 どうも、最近は、ああいうコーダがかっこいいらしいのだが、私には、そうは思えなかった。
 重要な何かを、わざと回避して「あとは勝手に解釈して」と逃げているようにしか思えなかった。

 また、極めて不快だったのは、細川たかし≪心のこり≫の背後に、たいへん品のない集団が登場し、細川を侮蔑しているとしか思えない舞踏を、えんえんと、恥ずかしげもなく繰り広げたことだった。
 その中には、強烈な不快感を催す、ほぼ全裸の者もいて、私は、どこかに異常を来たした人間が登場したのかと思ったが、聞けば、あれが、いま人気のある「芸人」なんだそうである(では、どんな「芸」を持っているのかは、誰も説明してくれなかった)。
 彼らは、いうまでもなくNHKのしかるべき人物に言われたとおりにやっただけなのだろうが、誰か「これは、細川さんに対して失礼ではないですか」と疑問を呈する者はいなかったのだろうか。

 ≪心のこり≫は、なかにし礼作詞、中村泰士作曲の名曲である。
 細川たかしの本格デビュー作で、いきなりオリコン1位となった。
 1975年のことだった。

 それほど昔の曲だから、しかも歌詞もどこか滑稽さがあるから(それは滑稽ではなく、自暴自棄からくる「哀れ」なのだが)、さらにあの背後の集団が生まれる前の曲だから、その上細川たかし自身も翁長知事と同じ頭髪状態だから、さらにいえばニール・セダカ≪恋の日記≫演歌版だから、もうお笑いの対象にしていいのだと、NHKの演出家は思ったのだろうか。
 細川たかしは「こんな演出をされるのだったら、もう紅白には出ない」と言ってほしかった。
 また、なかにし礼さんは、いったい、どういう思いで、あの画面を観ただろう。
 まともな神経を持っている人間だったら、それを思うだけで、あんな異常な演出は、できないはずである。
 ああいうことを平気でテレビでやるから、成人式や、渋谷の交差点で暴挙に及ぶことをかっこいいと勘違いする若者が絶えないのではないか。

 そのことと、先述の「途中放棄したようなエンディング」には、どこか共通するものがあるような気がしてならない。
 そして、夏目漱石『三四郎』の冒頭部を思い出す。
 三四郎は、熊本から、大学入学のため東京に向かう車中で、奇妙な髭の男と会話を交わす(あとでわかるのだが、これが広田先生だった)。
 男は、日本には富士山以外に自慢できるものはない、などと、身もふたもないようなことばかり言う。
 そこで三四郎が「しかしこれからは日本も段々発展するでしょう」と言うと、あっさりこう答えるのだ。
 「亡びるね」
 三四郎は「熊本でこんなことを口に出せばすぐ擲(な)ぐられる」と、仰天する。

 しかし2015年末の紅白を見る限り、広田先生の言葉は正しかったと思わざるをえない。
(2015年12月31日所見)
(敬称一部略)


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