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2018.11.13 (Tue)

第213回 最後の普門館

普門館2
▲開放された、普門舘の舞台

 わたしが普門館へ初めて入ったのは、大学生だった1977年11月の全日本吹奏楽コンクール(全国大会)、および、カラヤン&ベルリン・フィル公演だった――と、あちこちに書いてきた。
 ところが、先日、古い資料をひっくり返していたら、1973年の東京都大会のプログラムが出てきて、会場が「普門館」となっていて、驚いた。この年、わたしは中学3年だったが、まちがいなく、この大会を聴きに行っている。中学の部の課題曲、兼田敏《吹奏楽のための寓話》を演奏する豊島十中や赤塚三中をはっきり覚えているし、だいたい、実際に行ったからこそ、プログラムを購入できたはずである。
 しかし、会場が普門館だったことは、まったく忘れていた。てっきり、杉並公会堂あたりだと勝手に思い込んでいた。記憶なんて、いい加減なものである。

 そんな普門館が、ついに閉鎖・解体されるにあたっての、舞台の“一般開放”(11月5~11日)に行ってきた。建物の閉鎖にあたり、このようなイベントが、よく行なわれるものなのか、わたしはまったく知らない。だが、こんなひねくれ者のわたしが、思わず感動させられてしまった。というのは、普門館の運営側スタッフ(立正佼成会、佼成文化協会、佼成出版社、東京佼成ウインドオーケストラなど)の対応やホスピタリティが、見事だったからである。
 そもそも、この種のイベントで、入場無料なのはわかるとしても、予約不要であることに驚いた。わたしも仕事柄、さまざまなイベントにかかわっているが、何人くらいのひとが来るのか、まったくわからずに1週間、毎日、来場者を迎えるなんて、よくできたと思う。来場者には、受付で、ロゴ入りの外壁タイル片(補修用の予備)、御礼カードが全員に配布された。吹奏楽コンクールを主催する朝日新聞によれば、7日間でのべ12,000人が来場したという(ちなみに、今回は毎日新聞やフジテレビも報道していた)。

 中は、てっきり、ロープでも張られていて、舞台上を下手から上手へ、5,000席の客席を眺めながら、時間制限にあわせて移動させられるものだとばかり思っていたのだが、まったく自由だった(客席の天井部分が耐震強度不足なので、客席には降りられない)。しかも楽器持参OK、舞台上での演奏自由、入れ替えもなかった(混雑時、少々、入場を待たされたが)。そのため、いつまでも多くのひとたちが、昔の「吹奏族」のように突発的な合同演奏を楽しんでいた(わたしが行った時は、《宝島》を何度も演奏していた)。
 わたしは、1964年の東京オリンピックの閉会式を思い出していた。何の制限もなく、自由に世界中のひとたちが、国立競技場で交流する姿は、子供心にも忘れられない。あれに、どこか似ていた。多数のスタッフが要所にいたが、立ち入り禁止エリアに入りかけたひとを注意する程度で、あとはおかまいなしであった。スマホでの写真撮影も、積極的に手伝ってくれた。

 今回のイベント主宰者の一社、佼成出版社が刊行している児童向け絵本に『虹の橋Rainbow Bridge』(絵・文/葉 祥明)がある。すでに2007年に刊行された本だが、最近、TVドラマの中で、この絵本と同じエピソード(先に逝ったペットは、天国の手前にある虹の橋のたもとで、飼い主が来るのを待っている)が紹介されたせいもあり、人気が再燃しているようである。いうまでもなく普門館はペットではないが、これだけのひとたちに愛され、惜しまれて記憶に残れば、まさしく虹の橋のたもとで再建されたようなものだと思った。
 これもしばしば書いてきたが、わたしは自宅が近くだったので、この建物を建築中から見てきた。そしていま、まさか、最後も見ることになるとは、夢にも思わなかった。その最後を、こんなに気持ちよく迎えられるとは、これまた予想しなかった。関係各位に心からお礼を言いたい。

普門館1
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