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2018.12.20 (Thu)

第218回 打楽器コンサートの日々

打楽器
▲左から、ゲラシメス、吉原すみれ、(右上)加藤訓子、(右下)東京音楽大学


 2018年秋から冬にかけて、まったく偶然ながら、打楽器のコンサートにたてつづけに通った。どれも珍しい内容だったので、簡単にご紹介しておく。

アレクセイ・ゲラシメス:パーカッション・リサイタル/11月4日(日)、彩の国さいたま芸術劇場小ホール
 ゲラシメス(1987~)は、ドイツの打楽器奏者で作曲家。打楽器をやっている方ならご存知、《アスヴェンチュラス》の作曲者である。ソロ・コンテストやリサイタルで、よく演奏される人気曲だ。本人演奏のYouTube映像は、再生回数20万回を突破している。
 自作のほか、クセナキスの、これも大人気曲《ルボンB》なども。たいへんスピーディーな演奏で、ほとんどスポーツを見ているようであった。
 終演後、簡単なティーチ・インが開催され、若い打楽器奏者たちが、スティックの持ち方や奏法などについて、細かく質問していた。

◆吉原すみれ:パーカッション・リサイタル2018/11月7日(水)、東京文化会館小ホール
 日本打楽器界のトップ、吉原すみれ(1949~)は、ほぼ隔年でソロ・リサイタルを開催している。しかも、毎回、曲のほとんどが「委嘱初演」である。よって、本稿で取り上げたほかの3つのコンサートとは、まったく色彩を異にしている。今回も、5曲中、改訂も含めて3曲が委嘱新作の初演だった(ほかに日本初演が1曲あり)。中には、両手両足に口までを使う曲(小山雅子《花街ギミック》改訂版)もあり、失礼ながら、年齢を考えると、まったく頭が下がる。過去の名曲再演はほどほどに、常に「まだ誰も知らない」新世界に挑みつづける姿勢は、スゴイとしかいいようがない。

◆加藤訓子「ドラミング」スティーヴ・ライヒ/11月8日(木)、サントリーホール小ホール
 《ドラミング》は、ライヒがガーナでアフリカ音楽を研究した、その成果を盛り込んだ名曲である。1971年発表なので、打楽器曲としてはそろそろ「古典」だ。しかしこれは、本来は12人編成の打楽器アンサンブル曲なのだ。
 それを、加藤訓子が、多重録音をバックに、ひとりで全曲ナマ演奏してしまう、前代未聞の「1人12役」リサイタル。
 録音された音源と、ナマ演奏との、音量や響きのバランス調整など、よくここまで徹底できたといいたくなる、見事な演奏だった。クイーン《ボヘミアン・ラプソディ》の「♪ガリレオ~フィガロ~」を上回る、究極の多重録音芸術である。
 
◆ジョリヴェ:打楽器協奏曲(東京音楽大学シンフォニーオーケストラ定期演奏会)/12月12日(水)、東京芸術劇場
 モーツァルトやベートーヴェンの時代に「打楽器協奏曲」なんてなかったので、このジャンルの曲は「現代音楽」ばかりとなる。内容的にも技術的にも高度な曲が多い。上記のように、ソロ曲だったら打楽器奏者一人が苦労すればいいのだが、オーケストラ伴奏の「協奏曲」となると、そうはいかない。これは、1958年、パリ国立音楽院の試験用に作曲された曲である。日本でも試験やコンクールではよく演奏されるが、ほとんどがピアノ・リダクション伴奏だ。今回のようにフル・オーケストラによる全曲ナマ演奏は珍しい。東京音大の挑戦に喝采をおくりたい(指揮・広上淳一)。
 楽章ごとに使用楽器が目まぐるしく変わる。第1楽章はティンパニとスネア・ドラム数台、ウッド・ブロック。第2楽章はヴィブラフォンにシンバル類。第3楽章はシロフォン、ムチなど。第4楽章は多くの膜質・体鳴打楽器の組み合わせ。これまた、ほとんどスポーツ競技を見ているような迫力。とかく荒れがちな演奏になりかねない曲だが、広上淳一の確実なサポートもあり、曲の構造がよくわかる、キチンとした演奏だった。
 いったいなぜ、大学オーケストラの定期で、このような難曲が取り上げられたのかというと、同大学打楽器専攻の吉永優香が、2017年の日本管打楽器コンクール、パーカッション部門で第1位を獲得、文部科学大臣賞及び東京都知事賞を受賞した、そのお披露目でもあったのだ。これから楽しみな奏者である。
<敬称略>

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