2019.01.04 (Fri)
第221回 平成なんてあったのか

▲ひさびさに大台を回復した紅白歌合戦。
以前、本コラムの新年第一弾は「紅白雑感」と決まっていて、(ほんの数人だが)楽しみにしてくれている読者の方もいたのだが、結局、毎年、おなじことばかり書くハメになり(曲も歌手も大半は知らないとか、抱き合わせ企画ばかりで不愉快だとか)、しばらく、やめていた。
だが、今回は、少しばかり思うところがあるので、ひさしぶりに、書きとめておくことにした。
東京五輪の前年、1963(昭和38)年の紅白歌合戦で、白組のトリ(三波春夫)の前をつとめたのが植木等だった。
曲は《どうしてこんなにもてるんだろう》《ホンダラ行進曲》のメドレーで、クレージーのメンバーとともに、ドンチャン騒ぎを繰り広げた。
この年の平均視聴率は、89.8%(ニールセン)を記録した。まさに植木等は「昭和のお祭り男」であった。
その植木が、1990(平成2)年、リバイバル・ヒットで20数年ぶりに紅白に出場し、《スーダラ伝説》をうたった。そして、個人別視聴率でトップの56.6%を獲得した。
植木等は、昭和から平成に橋をかけた視聴率男でもあった。
昨年末の紅白歌合戦は、「平成最後」が強調されていた。
ところが、観終わって感じたのは「昭和の残響」だった。
いうまでもなく、ラストで大暴れした桑田佳祐(62)、ユーミン(64)のせいである。
そもそも、「大晦日はおせち料理をつくるので」を理由に、過去、紅白出場を辞退していたユーミンが、中継ではなく、NHKホールに来たことが驚きであった。
あの桑田佳祐のパフォーマンスには賛否両論あるようで、「紅白対決に関係ない企画枠だったのに、桑田のおかげで、白組が最後を締めたように感じられ、一挙に白組有利に傾いた」というのである。
だが、紅白歌合戦は、いまや、総合バラエティなのであって、紅白対決の票数に真剣さを見出しているものなど、いるわけがない。
だから、そんなことはどうでもいいのだ。
問題は、平成最後の紅白を、還暦を過ぎた昭和の2人が締めたことである(強いていえば、その横に82歳の北島三郎がいて、それなりの存在感を醸し出していた)。
あそこには、平成を象徴する安室奈美恵も、浜崎あゆみも、倖田來未も、初期モーニング娘。も、小室哲哉も、宇多田ヒカルも、SMAPも、いなかった。
わたしは、あの奇跡の2ショットを観ながら、かつての植木等を思い出し、それどころか、もしかしたら、後ろから井上陽水(70)が、中島みゆき(66)や、竹内まりや(63)を率いて出てくるのではないかと、一瞬、錯覚を覚えかけたほどだ。
「平成」なんて時代が、あったのだろうか。
よくいわれるように、やはり、平成は、「昭和の二次会」だったのではないか。
5月以降、新元号になっても、もうしばらく「昭和の二次会」はつづくのではないか。
桑田=ユーミンは、そんなことを、あらためて思い出させてくれた。
<敬称略>
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